エルサレムに戻る

イエスのその弟子たちは、すっかり落胆していました。新しい神の王国に対する彼らの望みと夢のすべてが、おとといの金曜日、十字架に釘付けにされてしまったのです。深い悲しみと戸惑いで動揺しながら、クレオパと彼の友人は、エルサレムから７マイル（約１２キロ）離れた小さな村エマオへ、とぼとぼ帰っていくところでした。日曜日の夕方、日が傾き、彼らがでこぼこの道を歩いていると、１人の見知らぬ人が近づいてきて、旅をともにしました。２人は、この新しい旅の連れが復活された主だとは、まったく気づきませんでした。ともにいる旅人には少しも気を留めずに、２人の落胆した弟子は、週末に起きた信じがたい出来事を繰り返し話しながら、１歩進むごとに意気消沈していきました。

イエスは黙って耳を傾けながら、気落ちした友人たちにご自分のことを明らかにしたいと、どんなに願われたことでしょう。しかし、主はわざと正体を隠されました。というのも、これまで以上に、彼らが聖書を理解しなければならなかったからです。もし信心深いこの２人の弟子たちが主を見分けることを許されたなら、あまりにも興奮して、主が教える大事な真理を聞かなかったことでしょう。

３年半も主の教えと説教を聞いていたにもかかわらず、彼らはまだ主の使命の本質を悟っていませんでした。主は明快に話されました。「人の子は人々の手にわたされ、彼らに殺され、殺されてから三日の後によみがえるであろう」（マルコ ９：３１）と。イエスはそっと彼らの悲しい会話を遮り、２時間にわたって聖書と預言を理解するための鍵をお与えになったのでした。